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2015/07/20(Mon.) セクシー担当になりたい [長年日記]

[Review][Book] 今泉正光氏が語る「理想の書店」

"「今泉棚」とリブロの時代"の本文中、級数を下げられた注釈扱いだが、今泉正光氏が実現しかった「理想の書店」が語られている。リブロが地下1階に降りる時のリニューアル検討のくだりだ。

私は中国・ヨーロッパ・日本・イスラム等の文明史のBookインShop、また、十坪くらいのKeywordによる十軒くらいの本屋のストリート街(半年から一年度で内容を変更する)を作りたかった。

Keyword、Keybook、Keypersonはニューアカの砦たるリブロを語る上でのコンセプトワードだ。池袋の百貨店内に書店街を作ろうとしていたのだ。書店の粒度という概念に対する重大な問題提起をしようとしていたのではないか。総合書店において、「ついで買い」を誘発させるのはどこまで可能なのか。人文書とアイドル書籍、哲学書と料理本がセットに売れるのか。全く違う分野より、同分野の関連書籍の方が「ついで買い」が期待されていたとみるべきだろう。知の海図たる今泉棚がある程度閉じた分野の関連書籍サジェスト機能だった前提において、書店に人を吸引するには「特定の分野における絶対優位な書店」という看板が必要と考えられていたのだろうか。

2015年現代、これらのBookインShopが比較的実現しているのは蔦屋書店ではないか。代官山蔦屋書店、MORIOKA TSUTAYAなどは、広い空間にボックスで区切った書棚を配置する手法を多用している。ただ、人文書でなく実用書や旅行・地図の書籍での実現となったあたりは時代というものだろう。「ついで買い」というよりも書店空間の充実の側面でしかないと思われるが、リブロを買収した日販帳合のスター書店であるCCCが実現しているのが皮肉でならない。

また、その他の書店のエッセンスとして以下も語られている。

  1. 都会のオアシスとしてのBookセンター内を空調で上高地レベルにすること。
  2. ニューヨーカーの書評に対して、リブロ・クリティックスを創刊する
  3. ニューヨーク、ロンドン、パリなど特派員と契約し、世界の文化情報を顧客に提供する

「2.」「3.」は80年代らしい動きを見て取れる。80年代後半から90年代の国際化のうねりは凄かった。それまでの遠いあこがれから、生の情報を求める風潮に沿ったものだろう。

が、ここで刮目すべきは「1.」だろう。


書店、暑すぎませんか?


震えながらでも知識欲があれば活字を追ってしまう。だが、汗がだらだらでは読むのも憚られる。紙の本が濡れてしまう。知に応えるべき環境温度に言及した書店員は本書の今泉氏以外に居ない。上高地の高原のような環境こそが、本を読むに相応しいのであった。思えば、古くは渡部昇一が"知的生活の方法"で、書斎にはクーラーを入れるべきと力説していた。

上記は実現せず、結果できあがったのが「-POST」であり「CONCORDIA」であるわけで、それはそれでひとつの成果なのであるが、なぜ実現しなかったのかは書籍で確認して欲しい。

「今泉棚」とリブロの時代
今泉正光/著
論創社
¥1600


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