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2022/02/27(Sun.) バラライカ [長年日記]

[Review][TV][地域ネタ] コロナ禍における岩手の日常と異常

2022年1月30日深夜(1月31日0時)放送の「NNNドキュメント 雨の日も雪の日も~もりおか朝市日記~」を録画して視聴した。テレビ岩手制作のNNNドキュメントは東京に来てからも検知すれば見るようにしている。今回も期待して拝見したが、テレビ岩手制作のNNNドキュメントにおいて私が見た限りにおいては最も評価出来なかったので以下に書く。


作品自体は矢野智美アナウンサーがコロナ禍の神子田朝市を取材した労作である。

神子田朝市で商売を始め生活を立てようとする人たち、朝市の交流、市を開くか苦悩する理事長……定常のテレビ岩手取材カメラによるパートもあるが、矢野アナが朝市に集まる人とよろしくコミュニケーションを取って、関係を築いて、懐に飛び込んで人の表情をよく撮っており、平素であれば高く評価される作品といえよう。そもそもNNNドキュメントは、何かを強く訴えかけるインパクトよりも淡々とした事実記録に強い傾向があり、同作も「盛岡における同時代の記録・証言」として益のある中身である。


だが、最後の締めが良くなかった。

「1月27日現在神子田朝市でコロナ感染者は出ていない」

完全に余計なテロップだった。


神子田朝市が一丸となってコロナ対策を行っていたのは事実である。マスク着用を注意するシーンや、消毒推奨など出来ることを進めていた内容は映像からも伝わった。だが、オミクロン株のような感染力が強い変異株が出回っている昨今、否、そもそもどんなに注意しても陽性になる/感染するというのが新型コロナウィルスではなかったのか。そもそもが人が集まる市とソーシャルディスタンスは相反するものである。「コロナを1人も出してないすごい神子田朝市」というニュアンスに持っていってしまっており、「コロナに負けない神子田朝市」という範囲を超越してしまったのだ。これはまずい。

仮にコロナ陽性者が朝市から出たら、それは神子田朝市の失態なのか。違うだろう。今後、神子田朝市を月曜以外に閉める日が出たとしても復活してまた市が開かれ続けることが神子田朝市の強さであって、皆勤賞じゃなくなったら神子田朝市は終わるかのような伝わり方をしてしまった。

47都道府県で最後までコロナ陽性者が出ず県民が疑心暗鬼となった岩手の特異性が伺えた。岩手は2022年になってもコロナ陽性は悪なのだろう。岩手県内ローカル報道も「コロナ陽性者をゼロにする」ことに重きを置いているのだろう。その意味ではローカル発信って大事だな、と思いつつも「テレビ岩手、お前もか」と寂しく思った。


仮にも岩手を拠点としながらも全国に発信する報道機関でありながら、コロナ禍の岩手についての客観視も出来ていないのか。矢野智美は体調を崩して岩手を離れたという。ゼロコロナなのに県間移動ですか?と意地悪く訊いてみたい気持ちもあるが、岩手県外で言うところの「不要不急でない移動」なのだろう。岩手を離れたタイミングでは、岩手のコロナ0についてご家族・友人と話題にならなかったのか。それとも、療養に専念してそんな話をする間はなかったのか。

岩手の日常をうまく切り取ったクリップを、テレビ岩手はテロップ一つで台無しにしたのだ。テレビ岩手は作成中の同作を見て最後の締め方についてアレで良しとしたのか。流石にテレビ岩手で数少ない全国ネット、局内で議論をしたのだろうが、その僅かな言葉で作品を壊すのは映像制作のプロではない。


コロナ感染者が全国で唯一岩手からでていなかった頃、岩手の達増知事が賢明に最初の感染者が出ても責めないのだと県民に呼びかけていたが、岩手の報道機関は「コロナ陽性者を1人も出すな」ということを岩手県内で煽っていたのではないかと心配になってきた。録画とかもしてないし、検証しようはない。だが、コロナ禍における岩手の異常として、同作を史料に供しようかとは思う。


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